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悲しい落書き

真子は第3クールの3日目に入っている。
日曜に再入院し、学校の友達がたくさん見舞いに来てくれた。
楽しくおしゃべりしていた真子だが、それ以後は寝てばかり。
月曜からの点滴で吐き気も襲うのだが、それ以上に身体のだるさがあるようだ。
抗癌剤という「猛毒」を血管の中へ入れ、身体中を巡らせる。
身体の中から体力を奪い、披露させるようだ。16歳の若さでも、疲労困憊するのだろう。
そんな様子を見ていると「生きて生還するだけでいい」と思えてしまう。
私にも女房にも疲労は蓄積されているが、来週は夏休みで授業がない。
うまくすれば火曜か水曜に仮退院させ、家で休ませられるかもしれない。
そんな中、朝の掃除をしていて、二階の真ん中の教室の黒板に落書きを見つけた。
黒板一面に、やたらと「死」「苦」の漢字を使い、最後は「夜露死苦(よろしく)」だ。
「落書きが消えるまで、自習での全室の使用を禁ずる。書いたやつは退学してよい」
紙に書いて張り付けておいた。それを見た横山が、
「あの学年ですね。英語の後、中で遊んでいたようだから」
なるほど・・・さっそく明日の授業の前に、張り紙を見てこさせよう。
「誰かが書いて、先輩達が教室を使えなくなっているんだ。
 “バカな奴がいるなあ”って、笑ってきてやれ。
 けれどな、教室の生徒で今まさに、死と闘って苦しんでいる子もいるんだ。
 そのことを知って、黒板の文字を見て、笑っておいで」
たぶん、すぐに黒板はきれいに消され、張り紙もなくなることだろう。

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