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経緯

女房も真子も嫌がるかもしれないけれど、教室には真子と同世代の女子も多く、
注意喚起のためにも、その経緯を記録しておこうと思う。
真子が身体のだるさと食欲不振を言い始めたのは2ヶ月ほど前。
「疲れた?」「まあ、しんどいのは皆同じやし」と、女房も真子も気にしなかった。
5月の終盤からほとんど食事が取れなくなり、5月30日の夜に帰ってみると、
真子の腹がはっきりと膨れておりぐったりしているので、そのまま病院へ。
どうやら腹の中に大きな腫瘍があるらしい。翌31日の朝に入院し、その夜緊急摘出手術。
「胚細胞腫瘍」という、卵細胞自体が腫瘍化するものだった。
それを聞かされても私も女房も唖然とするばかりで、実感も何も湧いてはいなかった。
手術室から出てきて、麻酔が切れ、激痛に泣く真子を見ておろおろするばかり。
すぐに摘出した卵巣を見たが、直径10センチほどの腫瘍だった。1㎏を越えていた。
医師は立場上事実を淡々と語るばかりで、動揺している私の耳に入らない。
康太が夜も寝ずにパソコンで情報を集め、大学の図書館で文献を読みあさってくれた。
女子は生まれながらに、自分が生涯で排出する卵子をすでに持っている。
10代、20代の女子限定で、ごく稀に腫瘍化することがある。
痛みもなく、真子のように腹が膨れてきて初めて発見されるのがほとんどだという。
そうなってもたいていが良性の腫瘍で、稀に悪性になることがある。真子がそれだった。
真子が信じられないほど我慢強く、女房は毎日真子と風呂へ入り、
「太秦の駅から学校へ行くときに、ゆっくりしか歩けへんし、友達に“ごめんな”って言うねん・・・」
そんな話も聞いているのに、「気付いてやれなかった」と、女房は何度も泣いた。
それから先週までの1週間は、次第に状況が理解出来始め、人生最大の不安と恐怖を感じ始めた。
「娘が死んでしまうのではないか・・・」
私自身が癌になっても恐怖を感じるだろうが、断言できる、その比ではない。
夜中に布団の中で、朝教室の掃除をしていて、言い知れぬ不安と恐怖に声を出して泣いてしまう。
知らなかった。子供の危機に、親がこれほど不安になるなんて・・・
康太が膨大な量の文献から、データをまとめてくれた。
「基本的におとなしい癌で、転移は5%しか記録されておらず、抗がん剤が驚異的に効く。
 癌細胞が腹の中を漂ってほかの臓器に付着しても、すぐに死滅する。
 この癌が原因で死亡した例は、ほとんど記録されていない」
不安と恐怖は続いているが、大いに励まされた。
7日金曜日に病理検査(癌の形を特定する)の結果も出され、康太の報告と同じだった。
癌の形が特定されれば、さあ、抗がん剤治療だ。今日から始まる。もう始まっている。
真子の血液中の「腫瘍マーカー」の数値はまだ2万。通常は2ケタだ。
まだ癌細胞が様子をうかがっている状態であり、それを薬で叩く。
薬は点滴で血管の中に入れ、全身を回る。正常な臓器(特に腎臓)にも負担をかけるため、
まずは大量の水分を点滴しておき、その後2種類の薬を入れ、癌を叩いたらすぐに排出するよう、
最後にも水分を大量に点滴する。丸1日かかり、5日間それを続ける。
それが終わると、来週、さ来週は火曜日だけそれを行い、様子を見る。
抗がん剤の怖さは色々あるが、最大のものは「吐き気」と「白血球の低下」。
昔は吐き気に治療をやめる人もいた。白血球が減ると細菌への抵抗力がなくなり、
あらゆる病気に感染しやすくなる。昔はバランスを取るのが難しかったろう。
しかしこの10年で薬や技術は飛躍的に伸び、吐き気止めの薬がよくなり、
周りの患者に聞いても、吐き気で苦しむ人はいない。
白血球を増やす薬も開発され、数値が下がればすぐに投入できる。
その二つの心配がなければ、「驚異的に薬が効く癌」なので、希望を強く持てる。
今の医療はすべてを本人に告知するが、康太や私の説明を聞いて、
幸いなことに真子は不安のかけらも感じていない。
治療の説明を医師から受けた時も、「8月の留学に、行けませんか?」と聞いたほどだ。
「それにはちょっと・・・間に合いませんねえ・・・」
そう聞いて、「エジンバラへ行けない悔しさ」に泣いただけ。
ひとしきり泣くと「やけ食いする」と、売店へお菓子を買いに行った。
副作用で髪の毛も抜けることがあるが、昨日は学校の野球部の男子にメールし、
「あんた丸坊主やったけど、どれくらいの期間で伸びて来た?」
「な、なんやねん急に。俺、今は“ハゲ”と違うで・・・」
「薬で私の毛が抜けるかもしれんしや」
「あ!そうやったな、すまん、大変やな。大丈夫、すぐ生えてくるで」
そういう真子の様子を見て、家族も安心し、腹も据わり、希望しか見ない。
今日からの治療で、身体に残る癌は、すべてやっつけてしまおう。
その治療はデータを見ながら、最短で4回、多くて6回続く。
うまくいけば7月後半から、遅くとも9月から学校に復帰できると思っている。
真子は復帰に、何の疑問も持っていない。
私達夫婦は何の知識もなく、想像もせず、真子がこんな治療をすることになった。
塾生の女の子のお母さん、娘が「しんどい」とか、「おなかが張る」とか言えば、
まあ・・・たいていはなんともないのですが、「こういうこともある」と、気にかけてください。
親しい人にはずいぶん心配をかけています。
私もまだ動揺は収まりきらず、授業もどこか上の空になってしまいます。
申し訳ありません。勘弁してください。
けれどその分しっかりと治療し、元気に復活させますから。頑張ります!

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Re: タイトルなし

> こんにちは
> 突然のことでびっくりし、ホントに心よりお見舞い申し上げます…
> ミオは、お見舞いにいってもよいか?とあたしに聞いてきたので、
> 行くだけがお見舞いではないことを話しました…今真子ちゃんもご家族の皆さまも不安で一杯であろうと想像してます…ミオには、そのお気持ちに共感できるほどの力量がありません。かえってご迷惑と考え、控えさせました。ごめんなさいね…
>
> もう少したって、真子ちゃんの治療が、落ち着いたときぜひ会いに行きます
>
> 離れたところからですが、真子ちゃん、ご家族みんなが、落ち着いた生活を取り戻せる日まで、応援してます。
> 闘病とは、身体との戦いだけでなく、不安と向き合う、目に見えない不安それが最大の敵ではないか…と思います
>
> (あたしも、結婚して宇治に来るまでナースでしたから…)


お気づかい、ありがとうございます。さすがに元ナース、現場心理への配慮、心に染みます。
私は弱く、誰かに不安を話さないでおれません。そのような配慮に心が支えられます。

>
> 真子ちゃんがんばってくださいね!!
> たくさんのお友だち、ナースにガマンせず気持ちをはきだして…みんなに支えてもらってがんばって
>
> 先生、ご家族様
> 大変と思いますが、どうぞお体に気を付けて、真子ちゃんとともにがんばってください。
> なにもしてさしあげられなくてもうしわけありません…
> どうぞ、先生の生徒さんたちはみんな強くそだっていると思います!!たまには、生徒さんたちにも頼ってみてください…

そう、生徒達は強く育てています。忘れていました。

>
> えらそうなことかきました…気にさわりましたらどうぞ、お許しください
> ひとりの親としていてもたってもいられず、一筆させていただきました。
> また、何かお力添えできることがございましたら、なんなりと…

本当にありがとうございます。
満足な授業も出来ず生徒達には迷惑をかけていますが、頑張れそうです。

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Re: タイトルなし

> 治療していくには家族の力が大事だと何度も思いました。看護師もなにか一緒にできればと思いますがなかなかうまくはいきません。
> 先生の思いは絶対、未来に繋がってると思います。
> もし、散歩でもと思ったらぜひ外もよいですが8階に。景色よいながめがみれますよ。

気づかいありがとう、たかこ。
真子本人より、女房の方がまいってるね。
今こそ家族で支えあわないとね・・・
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