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来る子・来ない子

中1のクラスにスミレがやってきた。卓球を教えているカリンの姉だ。年末に父親から
「真面目にやってるけど、どうにも“わかっていない”ようです。見てやってください」
と相談を受けていたのだ。
中2の初めからでもよかったのだが、どういう様子か見てみたくて呼び出した。
一度体育館で卓球をしているのを見たことはあるのだが、ほとんど覚えていない。
母親に連れられてやってきたスミレは、ひょろりと背が高い。隣のヒナと同じ165センチほど。
昨日のテーマは「立体の体積と表面積」。中でも「円錐の展開図」は厄介だ。
円錐の側面をたてに切り裂いて広げると「扇形」になる。
扇形とは、まあ、円の一部だ。しかしその事実が中1にはわかりにくい。
公式で「通り過ぎる」のは易しい。けれど「なぜその扇形になるのか」が難しいのだ。
私は逆から理解を試みた。
半径6センチの半円を作図させ、切り抜いて、円錐を作らせた。
円の中心を頂点に、紙に丸みを持たせて、メガホンみたいな形に・・・・
普通・・・特に説明しなくても作れますよ。けれど、カズマが作れない。
この子がいるから実際に作る作業を入れているのだ。
2週前の「正20面体」でも、設計図さえ作ってしまえば、ハサミで切り抜いて、
少しずつ折り曲げて、辺と辺がくっつくように・・・たいていの子は作れますよ。
けれどカズマは立体の認識が極端に弱い。掌でグシャリと握りつぶしてしまう。
『この子・・ひょっとして・・・・・』
もう一度注意して見ていると、この子はすべての式を「暗記」していることがわかってきた。
例えば三角形の面積は「底辺×高さ÷2」だが、なぜ2で割るのかがわかっていない。
これは・・・今のうちに直してやらなくてはならない。1年見ていて、ようやくわかってきた。
そんな授業をするから、スミレも呼び出したのだ。
「㎝と㎝、2個をかけるから平方センチメートル」
そんな「当り前のこと」に、ヒナがびっくりしたような顔をする。ようやく知識がつながった。
扇形の考え方は事前に済ませてあるので、円錐とつながれば、どの子の理解も深まる。
どの子も興奮したような顔で、グイグイと黒板の図や演算を進める。
スミレは・・・戸惑っている。これは仕方がない。
「黒板に書くこと」もそうだが、何より、「知識の、根本的な触り方」に慣れていないのだ。
サクサクと説明され、それを「暗記する」・・・スミレに限らず、授業とはそんなもんだ。
実際に扇形から円錐を作ってみて、「母線」とはどういうものなのか、
母線と底面の円の半径との関係は・・・それを目で見て、手で触ることは、なかなかしない。
そういう授業は、ひょっとしたら、妹のカリンにやらせている「多球練習」と同じかもしれない。
太ももやふくらはぎがプルプル震え、腕も痛くなっているのかもしれない。
それを年単位で、黙々と繰り返し、やらせているのかもしれない。
私の授業は「ハード」なのだろうか?けれど、それをやらないと、本当にはわからないじゃないか・・
スミレはニッコリとして帰って行ったが、気に入ってくれただろうか・・・?
スミレがやってくる前に「新中1の母」が二人やって来ていたが、どちらも断ってしまった。
「そうですか、満員ですか」一人は明らかにムッとされて、ろくに話もせずに帰られた。
これは・・・私が悪かった。電話で「はっきりと」断るべきだった。
けれど新中1は13人・・・・もう満員ではあるけれど・・・
ひょっとしてその子には、私のような教師でも、私の力を必要とするかもしれない。
カズマのように立体がわからない子なら、私が関われる子なら・・・
そういう「ためらい」が私の中にあったからだ。
けれどこれで5人。誰もそういうことを私に言う方はおられなかった。
「ちょっと進学率のいい塾」なのだろう。もしそうなら、私の授業をわかってもらえはしない。
もうわかった。今年の新中1は、もうしめ切ります。新たな「縁」は、もうありません。
「縁のある・なしで諦めろと?」そういう母もいたが、そうですよ。
うちでは「選抜」など、何もしていない。縁があるかどうかですよ。
「ごく当たり前のように」やってきたスミレとは、縁があったとしか、言いようがない・・・

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Re: 本当の理解

中学一年生の姪っ子の数学を見てました。比例、反比例、図形が苦手と言っていて一緒にまずは感覚から入りました。
> でも見て行くと四則計算や分数の理解が甘かったり、なんとなくカッコを使っていたりと本人は一生懸命なのですが、きづいていない積み残しがあり、やがてこれが混乱しわからなくしてしまうんだろうなというところが沢山見えました。
> 学校では全体のクラス授業しか出来ず本当の理解まで踏み込むのは難しいです。時間や人数の限界だけでなく、授業に気持ちが向いていない多くの生徒、授業以外の仕事でてんやわんやです。
教えるのが好き、子供が好きではやっていけない現実に気持ちがなえそうです。

そもそも教師がしてやれることは、せいぜい3割ほど。
あとの7割は生徒自らやらねばならず、それをしようとしない生徒には何もしてやれない。
俺は教えることは苦手で、特に子供が好きでもない。
「育てること」が、少しだけ好きなだけなんだと思う。
教師って、そんなものだと思うけどねえ。
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