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育てるためのもの その3

リョウヘイは「勉強も、自分で頑張るんだ」と固く決心していた。
高校では「下のクラス」とはいえ、数学はトップクラスを維持している。
ふと、教室に通い続ける双子の姉のノートを見ると、さっぱりわからない。
「やってることの、レベルが違う・・・・」
なまじボクシングをやることで「レベル差」が見えるようになったのか、愕然とした。
「俺・・・なんでボクシングなんか始めたんかなあ・・・やめときゃよかったなあ・・・」
ボクシングには勝てない、勉強も、本当にはわかってなさそうだ・・・中途半端だ・・・・
「2年からは7時半からだから、教室に戻ろうか?」
親もそう言うし、私も何とかしようと思っていた。
「・・・・いや・・こんな中途半端で、先生に合わせる顔は・・・ない」
それがリョウヘイの結論だった。
それからどのように過ごしてきたのだろう?勉強は二人の姉に聞いているようだった。
減量が厳しすぎ、いつの間にか一番軽い「ピン級」から「ライト級」に上げたらしい。
減量が楽になり力が出るのか、大会では自分よりでかい相手ばかりを力で押しまくった。
ボクシングを始めて2年、初めての優勝。姉が嬉しそうに私に報告してくれた。
「ご褒美」にオリンピック・チャンピオンと撮ってもらった写真を持って、
リョウヘイは初めて教室にやってきたようだ。私はおらず、横山が受け取って話を聞いた。
勉強も数学だけでなく、理科もクラスではトップに立ったようだ。
私は・・・とりあえず、ホッとしている。しかし、これでよかったのかどうかは、まだわからない。
高1の時点ではリョウヘイの心と身体を叩き直すために、ボクシングは「必要」だった。
それは間違いではなかったと思う。
私は昔に比べると「俺じゃないと。俺が叩き直す!」と言う気持ちが、どんどん薄れている。
それは私一人でどうにかできるものではないということがわかって来たこともある。
また、生徒はどうしても指導者に似てきてしまうところがある。
それも仕方のないことだが、年々私には自信がなくなって来た。
「その子が成長すること」が、大前提なのだ。
それは私に「似てくる」ことなのだろうか?私にはまったく自信が持てない。迷ってしまう。
それはリョウヘイが「何でボクシングなんかを・・・」と、迷った時の気持ちと同じだ。
「このままじゃあだめだ。もう少し・・いや、より強く、ボクシングをやってみよう」
リョウヘイはそう決断したが、それもまた、私が毎朝予習するときの気持ちと同じだ。
「この数学が、この子の人生に、いいものになるだろうか?」
その問いかけに、答えはない。
けれど、その子にとって「いいもののひとつ」には・・なってくれるかな?
もちろん高校や大学入試で負けさせる気はない。けれど、それが目標ではない。
リョウヘイの「優勝」は、とっても嬉しい。けれど、やはりそれが人生の目標ではない。
リョウヘイは「スポーツ推薦では、大学へは行かない」と、勉強も頑張っている。
私がリョウヘイを手放したのが正しかったのかどうかは、これからの彼の過ごし方による。
その子の成長に必要ならば、なんだって利用する。
それが私の「手を離れること」ならば、残念であっても、私のもとから離そう。
そうでないならば、決して手放すことはない。
そうやって迷いながらも、毎日を生きてゆく。
人生とは、子供にとっても、大人にとっても、同じくそういうものなのかもしれない。

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