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育てるためのもの その2

その時のリョウヘイには、ボクシングは最適に思われた。体重制のため「チビ」がハンデにならない。
そしてボクシングは・・・殴りあう競技だ。私はそれに期待した。
鍛え上げられたボクサーを前にして、「いきがり」も「はったり」も「思い上がり」も
「甘さ」も通用はしない。それらはすべて「タコ殴り」にされて、痛い思いをするだけだ。
私はそれに期待したのだ。甘ったれたリョウヘイなど、半年もすれば逃げ帰ってくるだろう。
その時に「だからな、お前みたいに甘ったれた奴はな・・・」と、数学で鍛えればいい。
そう思っていたのだ。ところが・・・・
本格的な練習に入ると疲れ果てるから、夜中に悪仲間と遊びまわることがなくなった。
それは私の狙い通りだった。
スパーリングをすれば、まだ弱いから散々殴られる。
その辺りで逃げ帰ると思っていたら、リョウヘイは「殴られないため」に、練習を強化し始めた。
練習をすれば筋肉量が増える。自然に体重は増加する。
私は「リョウヘイにはないだろう」と思っていた「減量」も必要になった。
鍛えるためと減量のために朝晩ランニングは欠かせない。
昼ご飯は「おにぎり一つ」で、晩御飯に肉が出てくると、重さを測って「半分」にする。
育ち盛りに「飯が自由に食えない」。そんな過酷なことがリョウヘイに出来るとは思ってなかった。
日曜にランニング中のリョウヘイと出くわすこともあった。
「あ!先生、こんにちは!」「おう!頑張ってるな」「はい!試合も近いですから」
着きものが落ちたようにすっきりとした顔で、言葉づかいもはきはきしている。
服の上からでも「身体のシャープさ」がわかる。ぺこりと頭を下げると、再び走って行った。
その姿ははっきりと「ボクサー」になっていたが、試合には勝てなかった。
地元の選手を有利にする「ホームタウン・デシジョン」。試合は敵校で行われ、審査員も敵校の教師達。
「互角」どころか「やや有利」くらいでも確実に負けにされてしまう。
そんなことは、顧問は百も承知だ。
「だからな、ノックアウトするか、圧倒的に優勢でないとダメだぞ!」
しかしどの競技でもそうだが、鍛え上げた者どおしが競って「圧倒的」は、基本的に起こらない。
少々の技術的な差があっても「ねじりあい」になり、「ギリギリ勝つ」のが普通だ。
リョウヘイはことごとく「この1番」には勝てなかった。
悔しさ、もどかしさ、後悔・・・リョウヘイでなくとも、心は揺れ始める。

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