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育てるためのもの その1

横山が嬉しそうに窓際に1枚の写真を飾った。
そこにはロンドン・オリンピック・ボクシングで金メダルを取ったチャンピオンとリョウヘイが写っている。
高2のリョウヘイは今回の京都府高校ボクシング大会のライト級で優勝した。
南京都学園出身のチャンピオンがその大会を見に来ていたのだろう。
二人並んで「ファイティング・ポーズ」をとって写っている。
リョウヘイは写真を撮ってもらうとき「めちゃくちゃ緊張した」らしい。
小学校の時からうちに来ていたリョウヘイは、勉強は「普通」だったが、
中3の頃から不良にあこがれ、チンピラになろうとしていた。
身体もひときわ小さく、どう見たって「大物の悪」にはなれそうもない。
好きなことをして、楽に生きて、そのくせ漠然と「将来は教師に」と思っている。
その甘さに堀川から激怒され、横山に怒鳴られ、私には思い切り殴られた。
中学の理科の教師とも喧嘩をし、教師は言葉は返さなかったが、「1」を返した。
それは教師の無言だが、最大の武器である。
すったもんだで私立高へ入れたが、誰もその甘さをリョウヘイに「教える」ことは出来なかった。
高校生になったリョウヘイはボクシングを始めた。ボクシング部の顧問は
「毎日来るなら入れてやる。塾で来れない日がある?ダメだ、入れてやらん!」
親がどれほどうちの教室を説明してもダメだった。顧問にとっては「普通の塾」だった。
家族全員が「よそで、気軽にボクシングをやろう」と言う。
私だけが・・・・まよっていた。「どうすれば、この子が育つだろうか?」
数学でもある程度は育てられるだろう。けれどこの子は自分の「甘さ」に気付くだろうか?
顧問は「大学へ行きたいなら、スポーツ推薦で入れてやる」と言う?
それだけはダメだ!一般の人はスポーツ推薦の実情など知らない。
スポーツ推薦でも昔から「学業優先」という「たてまえ」にはなっている。
しかしそれは建設業の募集パンフレットで「日・祝日休業、残業は月20時間まで」
などと言うことと同じくらいに嘘だ。入学と同時に言われる。
「学業は優先だけどね、君達は勝って、大学の宣伝をするという義務も持つ。
 学業は優先だけど・・・勝つためには・・・あとは君が判断しなさい」
負けが込んでくると
「何やってんだお前!授業だ?出てる暇があるのか!」
怪我や故障で競技が出来なくなると「ポイ」と捨てられ、大学も辞めなくてはならない。
私の知る限り、卒業する選手は「一握り」だ。リスクが高すぎる。
ほとんどアナウンスされないが、スポーツ選手の「末路」には、見るに堪えないものが多い。
「大学へは“自力で行く”という条件で・・・・ボクシングをやれ」
家族はびっくりした。私に見放されたと思ったかもしれない。
それでも私は、リョウヘイをボクシングに託すことにした。

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