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教師は生徒を医者に渡してはならない

その娘が小学3年生に時に、初めてその教師が担任になった。
バカだ、のろまだ、愚図だ、知恵遅れかもしれぬと娘だけでなく母も罵倒され、
母は仕方なく娘を学習塾へ通わせた。「うちの娘がバカなのだから」と。
いきさつを知らず、小3で塾へ行っていたとだけ聞いていた私は、
「そんな子は取りたくないな」と思っていたほどだ。
学年が変わりその教師と離れた娘は、見違えるほど元気になった。
友達ともよく遊び明るくなっていたのだが、小6で再びその教師が担任となったのだ。
私がそれまでのいきさつと現状を初めて聞いたのは5月だっただろうか。
変わらず罵倒される日々が続き、ついに全身に原因不明のジンマシンが出て、
食事もろくに取れなくなった。
娘はそれでも「学校へは行くもの」と思い込んでおり、身体を引きずるように行っていたのだが、
ついにある朝布団から立ちあがることが出来なくなった。
そんな時に母は、私に相談に来たのだ。
話を聞いた私は激怒した。
校長に相談すること、その教師には娘は多少のんびり屋ではあるが、そういう性格であり、
罵倒するなど関わり過ぎるのはやめてもらうように伝えることなどをアドバイスしたように覚えている。
しかしその時には、私は戸惑っていた。なぜ教師がその子をそれほど罵倒し、
バカにするのかわからなかった。
教師が生徒をいじめているなどとは夢想だにしていなかったからだ。

私の激怒が悲しみに変わったのは、両親が初めて学校でその教師と対峙した冒頭の話を聞いた時だ。
ふてくされた様子で部屋に現れた教師に母は、「娘を精神科医に見てもらいました」と告げた。
きっと学習障害や運動障害があるに違いない。どういう育て方をしたんだとまで、
母はその教師から言われていたのだ。その教師の第一声は、こうだ。
「遅すぎる。もっと早くに見てもらうべきだったんだ」
その瞬間、私の激怒は、やるせない悲しみに変わった。

母は診断書を教師に見せた。それは教師の意に反していただろうが、
常々私が「問題ないはずだ」と言っていた通りのものだった。
脳機能、精神発達度、運動能力、その他いくつか、多少の数値の変動はあっても、
ことごとくが「標準内」に収まっていたのだ。
そういう事実を積み上げられて逃げ場がなくなり、ついに教師は「いじめ」を認めるのだが、
そのことはもう、私にはどうでもいいことだった。
・・・・なぜその教師は、自分が受け持つ生徒を、医者に見せろと言ったのだろうか?
仮にその小学生が「アスペルガーでした」「発達障害と言われました」「学習障害で~す」
と言われてくれば、その子に対する異なった教育法でもあると言うのだろうか?
私は嫌だ。「危ないな」と思える子ほど、いっそう医者には見せたくもない。
病名を付けてくれたからと言って、それが何の足しになると言うのだ?何にもならない。
ひたすらその子を見つめ、少しだけ関わり、少しだけ刺激を与え、人生の一時期を共に歩む。
教科を学ぶ作業の中で、その教科ではない何かを学び取らせ、
その学びが将来のその子を助けてくれることを願って送り出す。
そういう教育の場では、その子が学習障害かどうかは、ほとんど関係がない。
物覚えが悪いのなら、どうしようか?動作が遅いのなら、どうしようか?
そういうことを考えることこそが教育だからだ。
そしてそもそも小・中学生が、時々ボーっとする、板書がうまく出来ない、話がうまく聴けない、
勉強が苦手、足が遅い・・・・などなどは、はたして「障害」なんだろうか?
そういう「障害」を一つも持たぬ子などめったにいないことを、教師なら誰でも知っているはずだ。
ほぼ全員がそういう「障害」を持っているのなら、それを「普通」と言うのではないのか?
そうとも、成長過程にいる子供など、それで普通だ。
ただの一つでも改善させることは大変な作業だが、それに挑むのが教育だ。
そう言う「普通の子」を医者に引き渡すなどと言うことが、私には納得がいかない。
教育とは教師の仕事であって、医者の仕事ではないのだから。

昨日の中3は相似則の最後で、細かな定理や考えをたくさんやった。
確かに私の説明が足りず、最後の「二等分角の定理」に、ミツハがフリーズした。
『ま、いいや。来週もう一度やろう』
皆が帰った後、ミツハは教室に残り、テキストとノートに目を走らせている。
その姿は毎週であり、その相談相手がマスミなのも、いつもだ。
「この問題の、ここんとこ、ようわからへん・・・」
「わたしもわからんけど・・・こう・・・かな?」
「う~ん・・・」
その二人の姿と語らいこそ「数学じゃないもの」だ。

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