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スポーツとのバランス

両手を突き上げて床に倒れ込む、若き挑戦者吉村。
両手で顔を覆い、ベンチの椅子から立ち上がれない「絶対王者」の水谷・・・
全日本卓球選手権決勝の「歴史的瞬間」を、私も康太も唖然として見つめるばかりであった。
高校生が決勝に上がってくるのを予想した人は多い。
しかしそれは吉村ではなく、「世界ジュニアチャンピオン」の高2・丹羽であった。
吉村も「アジアジュニア3位」で弱くはないのだが、「まだインターハイレベル」と思われており、
誰もが予想しなかったのだ。全日本「5連覇中」の22歳・水谷も「負ける相手ではない」と言っていた。
私も康太も「そりゃあそうだろ。4-0であっさり終わるな」と思っていた。
ところが吉村は強く、1・2セットを連取してしまう。4セット取れば優勝だ。
しかしさすが「世界ランク9位」の水谷も3・4セットを奪い返し、
そのまま行くのかと思ったが、共に1セットずつを奪い最終セットへ。
最後まで激戦であったが10-7で水谷の「マッチポイント」。
「やっぱ、勝てない。でも、だからこそ思い切っていくだけ」
タイムアウトを取りベンチコーチと確認し合った吉村は、以後5本を連取し、逆手優勝した。

小学生から高校生までの「若手」の活躍が目立った全日本であった。
彼・彼女達は基本的に小学低学年の頃から365日、毎日3~4時間の練習を欠かさない。
特に小学生のうちは才能よりも「練習を多くした方」が勝つ確率が高い。
しかし私はだからこそ、小・中学生の指導に迷い、疑問を持つ。
宇治小での「週1回だけ」の練習に来ている小学3年のカリンは素晴らしい才能を持つ。
「専門道場へ週に2~3回行けば、京都のタイトルは取れますよ」
親にも本人にも勧めてみたが、「お試し」の練習に参加したカリンは尻込みをした。
「なんだか・・・恐そう」
私は「もったいない・・」と思うと同時に、「それは、正しい」とも思った。
小学3年から「卓球だけ」の生活を送り、社会へ出るときに「卓球以外、何も知らない」
という状態になることを・・・私は良しとしないからだ。
まったくアナウンスされないが、そうやって「路頭に迷う」選手は、びっくりするほど多い。
昔はそれでもよかった。子供は自ら進んでやっていたし、何とか「食っていく」ことが出来た。
しかし今は指導技術も進み、明らかに「やらされて」おり、子供は「思考錯誤」することがない。
私はスポーツでも学問でも「思考錯誤の部分」、「一見無駄に見える部分」こそが、
その子を強く、逞しく育てると思っている。
今の子供たちが「バカでひ弱」に見えるのは、スポーツ施設や塾が
「こうすれば成功する」と「無駄をなくす」ことばかりをやっているからではないだろうか。
私の経験では数学も、実は「雑学」の多い子ほど出来ている。
事実この教室に通う子は、「数学以外のもの」を「数学から」学び、レベルを上げている。
カリンはこの半年私の指導を受け、すっかり本格的な「選手」になった。
私の「厳しい多球練習」も楽しんではいるが、小学生同士の「へたくそな練習」も楽しんでいる。
「勉強は・・カリン、あんまり出来ひん」「勉強もせんなあかんで」「うん」
もったいない気もするが、そういう「バランス」の中で育つ方が、この子のためになるだろう。

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