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あと「ひと呼吸分」の酸素ボンベ

「自分なりに練習は頑張ってきた。少しは強くもなった。緊張もない。冷静だ。
 ・・・よし!こんなところで、こんな相手に負けるわけがない!
 ・・・けれど・・・なぜ身体が震えるのだろう?
 緊張はしていないのに・・・なぜ・・・足が動かないのだろう・・・?」
真子には、その震えの理由が分からなかったという・・・

ナゴ・真子・リサコの3人は2年前の夏の大会に1年生でデビューし、1・2・3位を独占した。
「怖いもの知らず」であった。実際には勝てない3年生は何人かいたのに、
「いっけえ~!」とぶつかってこられるので、先輩たちはたじたじとなり、負かされたのだ。
それ以来、3人の「どうし討ち」以外にはほとんど負けていない。
2年生の時が一番「楽勝」であった。しかし、3人とも「すぐれた才能」を持っていたわけではない。
強いと言っても、その頂点はさほど高くもない。
エベレストほど高ければ誰も挑もうとはしないが、この程度だと「ちょうどいい目標」にされる。
「あの3人に勝つには、どの程度強くなればいいのか。何を、どう練習すればいいのか?」
3人は研究され、ターゲットにされ、その差は「必ず」なくなってくる。
もちろんそれは3人が一番、試合を重ねるほどに感じ取ってしまう。

私が小浜市でボランティアコーチをしていた30年ほど前、
小・中・高校生の県チャンピオンを何人も出し、全国大会へと送り出していた。
最高は「全日本ベスト8」で、「外国選手にどれだけ勝てるか」という、
「ポイントランキング」では1位となり、アトランタオリンピックの代表になった。
そんなチャンピオンたちが、ことごとく同じことを言っていた。
「どの大会でも1回戦が最も緊張し、必ず“ギリギリの勝負”も1回はある」
良き指導者は必ず「その時」を想定し、身体や頭脳が「酸欠」になった時の
「もうひと呼吸分のボンベ」をその選手の中に入れておこうとする。
元々「巨大な酸素ボンベ」を持つ「天才」はごく稀におり、そういう選手にはそういった指導など必要ない。
逆にナゴ・真子・リサコなど圧倒的多数の「並みの選手」は、そのような天才には勝てない。
何をどう鍛えようが、何をアドバイスしようが、「無慈悲」なほどに勝てはしない。
しかし・・・「ぎりぎりの勝負」なら・・・「あとひと呼吸分の酸素」でいいのなら、
教師や指導者は「働きかける」ことが出来る。「教育」とはそういうものだ。
それとて簡単なことではない。
その選手の「どこに、どのような形で、どうやって」入れておくのかは、誰にもわからない。
体力として入れるのか、精神面として入れるのか、技術として入れておくのか・・・
「天才」にはすんなり入ってしまうが、「並みの選手」には何年もかかってしまう。

ベスト8でリサコが、春に続いて同じ「西小倉のエース」に潰されてしまった。
見ていた真子には「明らかに研究されていた」ことがわかったという。
次の準決勝では自分がそのエースと当たる。
もうひとつの準決勝ではナゴが「東宇治のエース」の挑戦を受ける。
かつてはたくさんあった差がほとんどなくなっている。しかも研究されてもいる。
相手には、かつての自分たちがそうであったように、プレッシャーなどなく、
「いってやれ~~!」と、容赦なく襲いかかってくる。
はたして・・・どちらもセットオールで、勝負は最終セットに持ち込まれた。
西小倉のエースは「強烈なサーブ」と「ブロック力」で勝ち上がり、リサコを倒した。
真子は1セット目を取ったが、2・3セットを奪い返され、あとがなくなった。
その時に自分でも理解出来ない震えが来たのだ。それが本当の「プレッシャー」なのに。
4セット目をどうやって取ったのか「まるで覚えていない」と言う。
最終セットはどちらも「目が見えない泥仕合」となり、「9オール」となった。
あと2ポイント取った方が勝つ。サーブは相手のサーブであった。強烈だ。
そこで・・・・たぶん・・真子は「最後のひと呼吸」をしたと思う。
私が3年がかりで真子の中に備えておいた「すこぶる小さな酸素ボンベ」だ。
サーブをはね返し、何とかマッチポイントを握った。
相手にはもう、酸素が残っていなかった。次は得意なはずのサーブを、まさか!のサーブミス!!
からくも真子は逃げ切った。ナゴも同じように「ぎりぎり」で這いあがった。
ナゴにもまた、その父と検討を繰り返し、「酸素ボンベ」は備えられていたのだ。
決勝はどちらも力が抜けてしまい「練習モード」だったようだ。
実力通りにナゴが優勝、真子が準優勝。真子にとっては「嬉しいばかり」の準優勝だった。
これほど機嫌のいい真子も久しぶりに見た。
今日は団体戦。これは「酸素ボンベ」の必要もなく、楽勝だろう。
次は来週の「山城大会」と「京都大会」だ。

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