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幽玄のホタル

日曜の夕方に、家族4人で喜撰坊へ行った。もちろんそばも食べるのだが、目的はホタルだ。
毎年この時期に「ホタルの夕べ」と称して、晩御飯後に女将さんがホタルを見に連れて行ってくれる。
5年ほど前に夫婦で見に来て感動したのだが、康太や真子にも見せてやろうということになった。
6時に着くと3人のおじちゃん・おばちゃんが座っている。
客ではなく、月に一度の「蕎麦打ち道場」の生徒さんだという。
3人はすでに「上級」の腕前で、それぞれが1キロのそば粉を打ち、
ほとんどは家へ持ち帰るのだが、その前に自分たちの蕎麦を「味見」して帰るのだ。
「ま、うまけりゃあ『わしの手柄』で、まずけりゃあ『師匠が悪い』でいいですよね」
そう言うとおじさん達は大いに喜んだ。
すぐに私たちのざる蕎麦も出てきた。「確かにおいしい」。康太も真子もあらためて言う。
食べていると3人のじいちゃん・ばあちゃんが「青梅」がいっぱい入ったかごをいくつも持ってきた。
かごは10個はある。すごい量の青梅だが、3人で日中に摘んだのだという。
奥の座敷に座って、今から「ヘタ取り」をするのだという。
一つずつ手にとって、釘を使って「ホジホジ」している。
テレビなどない時代には、年寄りの夜の作業に最適なものだったろう。
そうして大きな梅は梅干しに、小さなものはジャムにしたりするのだという。
あれだけの量だと、その作業は3日ほどかかるだろう。

雨を心配したが急に晴れてきて、山に隠れた夕日に雲だけが真っ赤に染まった。
あまりに美しいので、家族4人でしばらく鑑賞。
暗くなり始めたので「そろそろ行くのかな?」と思ったら、予約客がいるらしい。
40歳前後の男女5人がやってきた。毎年ホタルを見に来るのだという。
5人の夕食がすむまですることがないのだが、女将さんが手作りチャーシューやら、
わらび餅とフルーツ・アイスクリームのデザートやらを出してくれたのでおなかがいっぱいになった。
8時半ころ外へ出て、近くの小川沿いに200メートルほど歩く。
5人の男女はさすがに慣れていて、頭にライトをセッティングしてたりする。
すでにホタルが飛んでいたりして、初めて見る康太と真子は大喜びだ。
小さな森の前まで来ると、無数のホタルが葉っぱにとまっていたり、飛んでいたりする。
「ホタルって、こういう色で、こんな風に光るのか!」
康太・真子は興奮状態だ。音もなくゆらゆら揺れるホタルは、まさに幽玄の世界だ。
草にいたホタルを女将さんが真子に手渡す。
虫を触れない真子だが、しばらく自分の掌で光る蛍を眺めている。
次に康太も受け取り、青い光に感動している。
「しかも熱は出ないのな」「うん、それは研究に値するなあ」
ともに受験生であり、真子は今週が期末テストだが、そういうものはすっかり忘れて、
しばし「幽玄のホタル」に酔いしれた。
とてもいいものを見た。「来年も見に来よう」
素晴らしい夜であった。

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