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ただのおにぎり

被災した方々に声をかけるのは難しい。あまりに痛ましくて、かける言葉がない。
「頑張れ」と声をかけられるのは、救援隊員だけかもしれない。
ヘルメットをかぶり、瓦礫を見据え、「もう少し頑張れ。今俺が助けに行くから」と。
テレビで応援メッセージを集めている。中年の婦人は、
「頑張ってとは・・・言えません・・・けれど・・私達は心から応援しています・・・」
素晴らしい・・・次は2人の女子高生だ。
「せーの、地震に負けるな!キャハハ!」
「やかましい!!すっかり負けちまってんだよ!」
思わずテレビに怒鳴ってしまった。このバカ女子高生どもは、映像すらまともに見ていないだろう。

被災地で中学生くらいの女の子がインタビューに応えている。
「ご飯がない・・家もない・・・今まで当たり前にあったものが、
 どれほど幸せだったかが、今初めてわかりました・・・」
女子高生どもは、この言葉の意味すらわかるまい。
小さな女の子が薄暗がりの中でおにぎりをもらった。配給の晩御飯だろう。
海苔も巻いていないただのおにぎりなのに、嬉しそうにかぶりつく。
「美味しい?」レポーターの問いにうなづき、少し笑顔を見せ、またかぶりつく。
・・・どうして子供って、こんなに無邪気なんだろう。どうしてこんなに素直なんだ。
無心におにぎりを食べる姿に、涙を誘われた・・・

授業の40分も前なのに、丸っこい笑顔で小6のヨシマサが入って来た。
「よ~し、倍数に丸をつけて来たか?」「ウン」
3から9までの倍数を99までの数字を書いた用紙に丸をする。
それが先週、マサヨシだけが終わらなかったのだ。ちゃんとやって来ていた。
まだ兄ちゃんほど勉強は出来ない。割り算は・・筆算でないと出来ない。
よく躾けられていて、動作はてきぱきしているが、整理のすべがまだよくわからないのだ。
なに、小学生なら普通のことだ。
「よし、ヨシマサ。今日は先生が算数をおにぎりにして食わせてやる。
 なに?おにぎりなんて食ったことない?よ~し、任せておけ!
 ・・・ほら、出来たぞ、食ってみろ。なに?形が変だ?
 バ、バカ野郎、こ、これがおむすびだよ・・・た、確かにごつごつしてるけど、
 贅沢言うんじゃあない、ほれ、食ってみろ」
「ウン」
「バカ、強く握るんじゃあない。おにぎりが壊れるだろう。
 あ!かじってすぐ飲み込むんじゃあない。よく噛まないか、バカだなあ。
 そう・・そう、よく噛んで、味わって食べろ。ほら、指についた飯粒も食べろ。
 どうだ?うまいか?」
「ウン」
「ハハハ・・・」

嘘も偽りもない。それが私の授業だ。
生徒会の先輩が真子に「高校から塾に入れて」としつこく言って来て、真子を困らせている。
申し訳ないけれど、中1から高3まで、すべて満員だ。
小6は5人だけど、ものすごくうまく滑り出せたので、もう増やしたくない。
こちらは気が楽だ。来年の中1まで待ってもらえばいいのだから。
今現在いる生徒達に、「少しでも美味しいおにぎりを」と考えるだけで精一杯だ。

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