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自活できている ④

「読書会に参加させてください」というチハルのメールには、近況が長く語られた。
「友達を作れ」という私のアドバイスはいまだにうまくいかず、心苦しく思っていること。
大学院はあきらめたのか、週に一度大阪の教室へ数学の勉強をしに行っていること。
教育にとても興味が出てきたこと。世の中への疑問・・・・・
それらは理路整然と、緻密に、とても丁寧な文章でつづられていた。
とても現代の青年とは思えない。まるで明治のころの青年か、
禅の修行僧のような印象を受けた。友達がいない分、何万回も自問自答したのだろう。
これは・・・かつてのチハルとはまるで違っていて、会うのが楽しみになった。
やってきたチハルは少しやせたのか精悍さを増していた。
朗らかにとてもよく話す。誰とでも。アスペルガーは消えたかのようだ。
そこで私は質問を投げかけた。気になっていたのは「仕事」だ。
チハルが仕事に就く姿がイメージできず、私は妄想ばかりしていた。
「コンビニで働いて、月給は8万円」なんて言われたらどうしよう?
やっぱり「馬鹿もん!ちゃんと働け!」と怒鳴らないといけないのだろうか?
チハルは様々な部品を作る工場で働いていた。
製品が企画にあっているか、品質は問題ないかをチェックする仕事で、
「とても楽しいですよ」という。その仕事だと、あまり人と話さなくていいもんね。
面接に行ったら面接官が「数学やってた?それならちょうどいい仕事がある」
と採用してくれたらしい。
その仕事と数学はあまり関係はないと思うが、一般の人は
「数学ができる」と聞くとビビってくれて、評価が高くなるじゃないですか。
いやあ、それだけでも数学をやっていてよかった、得した気分だ。
もう一つ気になっていることがある。
「で?給料はいくらだ?」「え?言うんですか?」「気になる、さっさと白状しろ」
10万円って言われたらどうしようと、まだ思っていた。
たくさん借りた奨学金が返せないじゃあないか・・・・・
給料は・・・かなり良かった!25歳の平均よりいいのではないか?
看護師10年で新婚のタカコが聞いたら「うちの給料、もっと上げろ!」
と怒り出すかもしれない。
「毎月2万円、奨学金を返してます」
それでも返済に20年ほどかかるが、完済できるだろう。値打ちのある奨学金だった。
正直私はチハルが今の姿になるのに、あと20年はかかるのではないかと思っていたからだ。
いや、うまくいったとしてだ。うまくいかず精神薬漬けになってひきこもるやつも知っているから。
チハルはこんなにも早くまともな社会人として自活している。
12歳で出会ってから13年。医者に「診断名」をつけられて、
こんなに早く立派な社会人になるのは記録的ではないだろうか?
よかった、よかった、よかった・・・
できもしない数学だったけど、数学にしがみついて大きな「正解」を出してくれた。
私が生徒と数学をやる目的・目標は、今のチハルの姿そのものだ。
11日はうんと楽しくなりそうだ。ウネの話も聞いて、串ハチで打ち上げをしよう。
そこでもウネの楽しい話を聞きながら、好きなだけ飲んで、食べてくれ。
安いものだ、お前はもっと価値のあることを、私に見せてくれたのだから。
私の喜びを皆に語りたく、ここに長々とチハルのことを記した。

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