FC2ブログ

終わらぬ人 怒りのエネルギー

「宮崎がCGを始めた」
そう言う噂はすぐに広がるらしく、さっそく業者がソフトを売り込みに来た。
宮崎さんも期待満々で「お?たくさん来たんだねえ」とにこやかに席に着く。
パソコン画面に映し出されたのは、立って歩くことができず、這いずり回るゾンビ。
肘と腰で動いたり、頭をこすりつけて進むゾンビもいる。
「ゾンビには痛覚がないので、このソフトにそう指示をすると、
 このように人間では考えられない“気持ちの悪いゾンビ”の動きができます」
業者は得意満面だったが、宮崎さんの表情は一変していた。
最初は静かに、しかし次第に語調は荒くなった。
「・・・僕には朝の散歩で出会う身体障害者の友人がいるんだが、
 その人は僕とハイタッチをするのに、すごく苦労して手を上げてくれるんだ。
 それを思い出して、僕はとても不愉快になってしまった。
 君たちはそういう“痛み”がわからないのか。
 気持ちの悪いものはどこかで勝手に作ればいいが、客に見せるもんじゃない。
 僕は君たちとは一緒に仕事はできません!」
業者は真っ蒼になり、言葉をなくしたが、絞り出すように、
「あ・・あのう・・・これはソフトの可能性を探る“実験”でして・・・」
「実験は重々わかります。しかし仕事はできません!」
その場面の映像はそこで終わったが、業者には宮崎さんの怒りの原因がわからなかったようだ。
ジブリ作品を見たことのない日本人はいないと思うが、見たことがないのだろうか?
宮崎アニメは「気持ちの悪いゾンビ」とは対極にある。
それを実験というならなおのこと、なぜ別のものを材料に選ばなかったのか?
ゾンビをジブリの前に、宮崎駿の前に出すという「配慮のなさ」に怒ったのだ。
配慮のないところでいい仕事は生まれない。そこには自己満足しかない。
そういう時代なのかもしれない。しかし我々爺は、そういうものに怒りを覚える。
その怒りがエネルギーになったのか、短編はうまくいったようで、
宮崎さんは長編も作るとプロデユーサーの鈴木さんに相談を持ち掛けた。
「3年だとこれくらいしかできないんだけど、鈴木さんの人脈を使って、
 駆けずり回って制作費を集めてください。途中で俺、死んじゃうかもしれないけど」
「いや、ミヤさん。ミヤさんが途中で死んだら話題になって、大ヒットするよ」
どうやら長編はスタートするようだ。
恐れない。最後まで、前を見つめたまま生きていこう・・・
宮崎さんはそう決断したようだ。私も考えさせられ、大きな勇気をもらった。
 

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

河原

Author:河原
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR