FC2ブログ

ドクターコース

高校時代まで康太には「これをやりたい」と言うものは特になかった。
何でもいい「これをやってみろ」と言われたら、それを頑張ってみるタイプだ。
そういう子にとっては物理工学科はよい学科だったかもしれない。
機械関係のことなら自転車から宇宙ロケットまで、とてつもなく範囲が広い。
それゆえそれらの基礎となる数学や物理も幅広く勉強しなくてはならなかったが、
それは苦ではなく、面白楽しく取り組むことはできた。
院へ入るまではそれでよかったが院は2年で、この冬からは就職準備がある。
教授や多くの先輩から話を聞いて、どの企業や研究所ではどんなことをやっているのか、
自分にはどういうことができそうなのか、おぼろげに見えてきた。
「自分は工作3割、研究7割の研究タイプで、“工作大好き”と言う奴には
 工作だけで勝負しても勝てない。研究7割で勝負したい」
将来的にどんな小さな部署でもいいが、そこのチームリーダーではありたいのだ。
それで調べていくと、リーダーはすべてが「ドクター(博士)」であった。
博士課程は院の上に3年ある。
すべての人が最初からドクターであったわけではなく、半数ほどは就職してから
「ドクターを取ってこい」と言われて大学に戻っている。
「けれどそれはすごく大変で、そりゃあ院からすぐに行ったほうがはるかに楽」
それでドクターコースも調べてみた。奨学金制度がある。
3年間の学費がタダになり、毎月新人サラリーマン程度の金の援助もある。
「それはとてもいいけど、いったい誰がそんな資格を取れるんだ?」
おそらく成績や論文で評価されるのだろうが、康太はチャレンジできるようだ。
ドクターだからと言ってリーダーになれるわけではないが、リーダーはすべてが博士。
その準備だけでもしておいていいのではないか?と考え始めている。
そこまで準備して、「では、夢は?」と言うと、大した夢ではない。
「何か一つでいい、“これは俺が作った”と言うものを作りたい」
下町ロケットの、「あのロケットのバルブ部品は俺が作った」でもいい。
きれいな教室を作って幸せに仕事をする私のようになりたいようだ。
こんな小さな塾で、金もうけはできないが、そういうことは問題ではない。
「人にはなかなか作れなかったもの」を作ることが康太の淡い夢だ。
まだどうするのか決まらないが、きっとそれは周りが決めてくれるのだろう。
必要とされるところへ進んでいくことだろう。私は目を細めて眺めているだけだ。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

河原

Author:河原
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR