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面影 ② 定年退職

「俺?小さな塾を30年続けてきたよ。自営業だな」
「ええやん!定年ないし。私は40年保育教師をして、今年退職したわ」
周りにも聞いてみると、60歳できっちり定年だという。
「世間では65まで引き延ばすとか言ってない?」「役所のことだろ、民間はどこも60だぞ」
保育教師の彼女も公務員だが、保育現場には決まりがあって、保育現場は退職。
ただし65歳まで役所の中なら務められるそうだ。けれど彼女は退職した。
「私は現場の“建前主義”が大嫌いで、いつも文句ばかり言い続けてきた。
 もっと目の前の子供を見なあかん。もっと自分の身体を動かさなあかん。
 上司や役所に文句言うから出世は遅く、園長も同期では最後やった。
 けれど、そんなことはどうでもよかった。私は保育教育に全霊を打ち込めた。
 ほかの役所仕事なんてやる気せえへんわ。きっぱりやめた」
高校時代は控えめで目立たなかった子なのに、この強さはどうだろう!
私の教育観とも一致するものがあり、思わず教育談議にのめりこんだ。
こういう気性は時代背景が育てたのかもしれない。
安保・学園闘争に参加こそしないが、見ていた最後の世代だ。
恩師も「お前たちの卒業後、はっきりと生徒の気質は変わった」という。
本当にはどうなんだ・・・彼女もそういう世代の人間だったのだろう。
新潟でアウトドアグッズのアドバイザーの仕事をしていた男は、
「俺も定年やけど、“後任が育つまでもう少し”と言われて、まあ、もうちょっとやるわ」
単身赴任だそうだが、エネルギーはすごいね。
酒造メーカーで営業をやっていたやつは、
「きっちり定年。まだ続けるけど給料は時給になる。パートのおばちゃんと同じ身分。
 給料も半分ほどになった」
かあ~厳しいねえ。まあ、子供は独立してるだろうから、金はそんなに要らない・・・・
え?子供は独身で、まだ金がかかる?大変だなあ。
「コンピュータのソフト作ってんぞ」「うどん屋だ。まだまだ続けるで」
「ドイツ銀行で銀行屋やってんねん」
職種はさまざまでも、基本的にまだもう少し続けるみたいだ。
しわが増え、頭は薄くなったが、誰もに「戦い続けてきた」という強さを感じていた。

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