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卒業生の帰還 再び

金曜の授業前にテラスでゴーヤを眺めてくつろいでいると、でっかい車が入ってきた。
するすると窓が開き、ポンと顔が出て、「先生!トキヒロで~す♪」
おお!トキヒロか。久しぶりだなあ。「こっちで仕事してるので、ちょっと寄ってみました♪」
トキヒロは9期生で、もう30代半ばになる。3人目の子供が間もなく生まれるそうだ。
「宇治川にいる絶滅危惧種のトンボの調査に来てるんです。川原をそれこそほふく前進して、
 泥だらけの作業が何週間も続きますが、これが楽しいんですよ♪」
中1の頃は痩せたチビで、勉強はざっと「オール3」だが、当時から昆虫が好きだった。
何とか地元の公立高校へ進み、金の都合で私立大には行けず、
「何とか学びを続けたい」と、ぎりぎりだったが奈良の教育大学へ進んだのだった。
滋賀県の環境調査会社へ入り、動物や昆虫などの調査で全国を飛び回っている。
そのおかげか身体はがっしりと、すっかりたくましくなっている。
「フィールドへ出て、どんどん新しいものを発見して、これほど面白いことはありません。
 僕は勉強はそれほどできなかったけど、“何かを発見する学び”は先生から教わりました。
 時々大学生とも調査をしますが、点数ばかり気にして周りが見えませんね。
 そんな連中は使いものにならない。それだったらイベントに来る小・中学生のほうが
 よっぽどいい子がいます。目がキラキラしてて、本当に大切なことを見ようとする。
 その姿勢がすべてです。僕にそういうことを叩き込んでくれたのは、先生ですよ♪」
バ、バカヤロウ、歳を取って涙もろくなってんだ、授業前に泣かせるんじゃないよ。
学生と作業するって言ったけど、大学で教えろとは言われないのか?
「何回かありましたけど、テストや論文を見て“これじゃだめだ、お前、もうやめろ!”
 という“退学にできる権利を俺にくれるか?”と言ったらだめでしたね」
そりゃあダメだろ?俺より過激じゃないか。
「でもね、先生。社会へ出て働くほどに、その大切さがわかってきますよ。
 目の付け方、動き方・・・若い頃に叩き込まれないと使いものにならない。
 現場で大切なものを発見できないし、楽しく働けませんね。おかげで僕は充実してます」
もう卒業生は数百人にのぼるが、たいていは平凡に生きているのだろう。
中には「河原のおっさんには何もしてもらってねえ!」というやつもいるのだろう。
けれど同じくらいトキヒロのように、時々でも「先生ありがとう」と言ってくれる卒業生もいる。
私が何をしようとしていたのかわかってくれる卒業生も、何人かはいてくれる。
この仕事をしていて落ち込むことは多いが、トキヒロの顔を見ることでずいぶん救われる。
初期の基礎段階を作り上げるときに、何らかの手伝いが出来たんだと、心からホッとする。
学ぶのはどこかのいい学校へ行くためではない。それに気づく卒業生もいてくれる。
その姿勢は貫こう。それを変えると卒業生に失礼だし、顔を見せなくなってしまうだろう。
今日からの授業に再び元気になれそうだ。

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