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焼鳥名人

今日本で一番予約の取れない焼鳥屋の主はまだ若く、40歳ほどだが16年のキャリアを持つ。
子供の頃から焼き鳥と、それを焼く炭の匂いが大好きで、貧乏だからジュースのから瓶を拾い集め、
それを酒屋へ持って行きなにがしかの金をもらい、買えるだけの焼き鳥を食べたという。
「僕は焼鳥屋になろう」
やがて焼鳥名店に弟子入りがかない、下働き3年の後、やっと焼き場に立てた。
「塩でも振って、ただ焼けばいいと思っていたんですよ」
ただそれだけのはずなのに、うまく焼けない。炭火がうまく操れない。
表面だけが焦げて、中には火が通らないことも。
悔しいから閉店後には手順を繰り返し練習し、人の仕事も奪って2倍働き続けた。
それでも思うようには焼けなかった。師匠が言う。「自分を出すな、素直になれ」
その鶏肉はどのように焼かれたがっているのかを思いやれというのだ。
それからは鳥そのものの勉強も始めた。養鶏農家へも出かけてゆき、様々な話を聞く。
鳥肉の部位によって火の強さはどうすればいいのか?うちわでどうあおぐのか?
寝ても覚めても焼き鳥のことを考える毎日。それは弟子入りしてから16年経った今も変わらない。
独立し、今では予約の取れない店にまでなったが、「まだ、鳥のことは全然わかっていません」
豆腐名人も、牛名人も皆同じことを言う。「名人?誰のことですか?」
勉強・研究には果てがなく、どこまでも実践するだけだと知っているから言うのだ。
それでもうまくいかず、失敗ばかりするから逆に、その面白さもわかるのだ。
「鳥皮はこう焼くのですよ」と、そこだけを公式化して講義しても、大切なことは何も伝わらない。
大切なことを伝えようとしないから、技術は進んでも、人も社会もゆがんでくる。
私もその伝え方など何も知らないが、何とか伝えようと、毎日実践し続けている。

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