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今時の教育

京都府高校数学の教員採用に合格したキノシタが教室にやってきた。
大学を出て丸5年も経っただろうか。文字通り、世間の荒波に翻弄されていた。
社会経験を経て採用されるのは「普通」だが、それまでの職歴を書類にし、
それが認められれば初めから「その分」を給料やボーナスに加算してくれるのだ。
ただしキノシタの場合そのほとんどが公立校の講師として働いており、
うちでの「アルバイト」など考慮してもらえないのだが、
「この教室で“働いていたこと”を、私の“職歴”に残しておきたいのです」
なぜだか、そういうことらしい。
4枚の書類に署名し、ハンコを押しながら話をする。
2年前は公立高校の夜間部で数学を教えていたのだが、この1年は昼間の高校で教えていたようだ。
キノシタは私が「なぜ怒鳴るのか」を最も理解し、生徒の「出来なさの背景」に迫るのがうまい。
それゆえか、講師は週に15時限を超えてはいけないという決まりがあるのに、
「出来ないクラス」と「出来るⅡ類」の両局など、18時限も教えている。
「何とか公立高校に“引っ掛かった”けれど、家庭はとっくに崩壊して、
 幼いころから放ったらかしにされていた生徒は少なからずいます。
 当然のように“欲求のおもむくままに”生きており、希望の持ち方も知らず、
 物の考え方・足元を見つめるすべも気づけない。
 高校生にもなると志向が“固まって”しまって、本当なら中学までに対処しないといけないけれど、
 とにかく目の前にいるのだから、何とかしようとしています」

最近の内田さんのブログによれば、「名人・上手」とは「とりあえず行動が起こせる人」だと言う。
それはどうやったらいいのかも、何をすればいいのかもわからなくて、
それでも「何らかの」行動が起こせる人が「名人」なのだと言う。
そういう人材はどの業種でも必要とするが、教育でもそうだ。
「僕はちゃんと“公式も解き方も”教えているのに、生徒が話を聞いてくれないから、
 僕ちゃん、もう、何を教えていいかわからな~い」
そういう輩はさっさと転職を考えた方がいい。教師と言う職業を誤解している。
キノシタは授業内容・展開を色々工夫し、様々なプリントも用意する。
たいてい「失敗」する。しかし失敗を重ねる中で、
「こいつには、こうやって迫ればいいのかな?」と、発見することがあるのだ。
それらは決して「生徒への奉仕」ではない。
そのプリントの1枚1枚には「生徒自身の努力」も要求している。
「あんたにも出来ることはある。仕事はたくさんある。それを見つけてごらん」
そう言っているのだ。生徒が動かず、「奉仕」などを要求しようものなら、
「何であたしがそこまでせんならんの!甘ったれるな!お前が動け!」
“誰か”とそっくりに“怒鳴って”いるようだ。

キノシタをうちから引き抜いた上司は、夜間部の教育に日々苦悩されている。
その上司のもとへ、かつて夜間部に「在籍していた」女性がやって来たのをキノシタは目撃した。
女性は自分の赤ちゃんを抱いていた。教師に5000円を差し出したと言う。
「在籍中に先生からお借りしていた5000円です。ようやくお返しすることが出来ます」
「そ、そんなことがあったっけ?」
上司は「すっとぼけ」ながらも、嬉しそうであったと言う。
「そんなことが10年に一度あれば、我々は教師を続けられるけどな?」
私がそう言うと、キノシタも微笑みながらうなづいた。

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