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可愛い子には旅を

夕方に見知らぬ男が入って来た。
「ご無沙汰です!」 精悍で、はつらつとした奴だが・・・・
『誰だお前は?あやしい奴だ!』すんでのところで追い返すところだった。
「カンタロー・・だあ?嘘だ、お前がカンタローのはずがない!
 カンタローってのはなあ、もっと自分に自信がなくてだなあ、うじうじ・いじいじしてて、
 去年広島大へ行って生まれて初めて親元を離れて、“淋しい、帰りたい”って、
 電話で泣いてたほどしょぼい弱虫なんだぞ!お前みたいに立派な奴がカンタローのはずがねえ!」
しかし・・・まぎれもなくカンタローだった。変わるもんだねえ。
やって来た横山も、カンタローとは6年も付き合ったのに、誰だかわからなかった・・・
ガキの頃は誰だって「何者かになれるかもしれない」と強がり、根拠のない自信を持っているものだ。
親や周りの人にどれほど支えられてるかも知らず、何だって自分だけでできると思っている。
しかし歳を重ねるほどに「何者でもない、不器用な、普通の自分」に気付き始め、
それを認めたくなくてさらに強がり、そのくせウジウジするものだ。
高校までのカンタローも、まさにそういう普通の子だった。
しかし広島へ行き一人暮らしをし、幸運にも、その強がりは打ち砕かれたのだ。
多くの大学生と触れ合い、ダンスサークルで面倒見のいい先輩とも出会い、
淋しさに眠れぬ夜を、暗い天井を見つめながら何度も何度も自分を問い直し、
どこかで「弱くて、普通の自分」を受け入れられたのだろう。
するともう、何も隠すことも、偽ることもなく、自分をさらけ出せるようになる。
去年の夏に「金髪」だった自分の写真も笑いながら見せられる。
あるアルバイトで金髪ではダメで、丸刈りにした。もう、ずいぶん黒髪が伸びた。
どこにも無理はないから自然と余裕が生まれ、態度がはつらつとする。
大学の単位は今のところ一つも落としてないという。
「将来は広島本社のマツダにでも就職出来ればすごいですよね。頑張らないと・・・」
こんな風に語るカンタローを見たことがなかった。
やはり男の子は旅に出すに限るのかもしれない。嬉しいひと時だった。

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